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東京地方裁判所 平成3年(ワ)2870号 判決 1991年12月17日

原告

右代表者法務大臣

田原隆

右指定代理人

岩佐勝博

外四名

被告

甲野一朗

右訴訟代理人弁護士

安田好弘

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一六億一八五〇万円及びこれに対する昭和五二年一〇月三日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二訴えの利益の有無についての判断

一前提となる事実

1  本件訴えは、いわゆる日本赤軍日航機ハイジャック事件で国が犯人ら(本件被告を含む)に支払った一六億一八五〇万円について提起された当庁昭和五五年(ワ)第一〇四〇一号損害賠償請求事件の確定判決(昭和五六年三月一二日確定)による損害賠償請求権(以下「本件請求権」という。)の消滅時効を中断するために提起されたものである。(<書証番号略>)

2  原告は、昭和六三年一月二九日、右確定判決を債務名義として、被告の第三債務者国に対する左記動産引渡請求権を差し押さえたが(当庁同年(ル)第三一一号動産引渡請求権差押命申立事件。以下「本件差押え」という。)、右執行手続はいまだ終了していない。(<書証番号略>、弁論の全趣旨)

被告に対する東京地方検察庁昭和六二年検第二六六一九号事件について同庁検察官が押収した現金(外国通貨を含む通貨)及び図書券、航空券その他の有価証券の引渡請求権(還付請求権)

二前訴で勝訴した当事者が同一の訴えを提起した場合、時効中断のための再訴等を除き、原則として、権利保護の要件を欠き、訴えの利益はない(大審院昭和六年(オ)第八九〇号同年一一月二四日判決・民集一〇巻一二号一〇九六頁)。したがって、本件訴えは、既に本件差押えによって本件請求権の消滅時効が中断しており、訴えの利益はないというべきである。

もっとも、差押えが債権者の請求又は法律の規定に従わないことによって取り消された場合は、初めから時効中断の効力を生じないものとされる(民法一五四条)という意味では、差押えによる時効中断は、条件付の効力しか有しない。しかしながら、事案からみて、本件差押えの取消しの可能性はほとんどなく、また、仮に差押えが取り消された場合でも、差押手続において債務名義上の債権を請求する意思が継続して表示されていたものとみて、右意思の表示に催告としての効力を認めることができるのであり(最高裁判所昭和四五年(オ)第八五号同年九月一〇日第一小法廷判決・民集二四巻一〇号一三八九頁参照)、取消後六か月内に再訴を提起して、時効を中断することができると解すべきであるから、差押えによる時効中断の効力が条件付のものであることを理由に、本件訴えの提起によって時効を確定的に中断させる必要があるとする原告主張は採用できない。

三よって、本件訴えは不適法なものとして却下する。

(裁判長裁判官澤田三知夫 裁判官片野悟好 裁判官菅家忠行)

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